シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

今月の額面広告に掲載されている問題はこれだ!

相洋中学校

2021年05月掲載

相洋中学校【算数】

2021年 相洋中学校入試問題より

データを代表する値のことを代表値といい、代表値には平均値や中央値、最頻値(さいひんち)などがあります。それぞれの意味は次のようになっています。
平均値…データの値の合計をデータの個数でわった値
中央値…データを大きさの順に並べかえたときに、ちょうど真ん中に位置する値
最頻値…データの中で、もっとも多く現れた値
このとき、次の問いに答えなさい。

(問1)次の(ア)~(ウ)の場合で、そのデータをもっともよく表している代表値として最頻値が適当であるものはどれですか。1つ選び、記号で答えなさい。
(ア)学校の売店で上ばきを売るときに、昨年売れた上ばきのサイズのデータから、どのサイズを多く用意すればよいか決めるとき
(イ)赤組と白組でクラス全員リレーをするとき、それぞれのクラス全員の50m走の記録のデータから勝敗を予想するとき
(ウ)英語のテストで、クラス全員の結果のデータから、自分がクラスの真ん中より良い点数かどうかを調べるとき

(問2)あるクラスの生徒15人が、この1か月間に読んだ本の冊数は下のようになりました。このデータの平均値、中央値、最頻値は、それぞれ何冊ですか。

(問2)図

(問3)(問2)のようなデータのとき、平均値は代表値としてあまり適当ではありません。その理由を簡単に説明しなさい。

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、この相洋中学校の算数の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、日能研がこの問題を選んだ理由を見てみましょう。(出題意図とインタビューの公開日については更新情報をご確認ください。)

解答と解説

日能研による解答と解説

解答

(問1)(ア)

(問2)平均値 5.8冊、中央値 2冊、最頻値 1冊

(問3)(例)この15人は平均5.8冊の本を読んでいることになるが、実際に5.8冊以上読んでいる人は2人だけで、13人は4冊以下である。よって、このようなデータのときは、平均値を代表値とするのはあまり適当とはいえない。

解説

(問1)最頻値は、データの中で最も多く現れた値なので、最も多い値を知りたいときに用います。
(ア)は、最も多く用意する上ばきの数を知りたいので、最頻値が適当です。
(イ)は、赤組と白組のどちらが速いかを予想するので、50m走の記録の平均値が適当です。
(ウ)は、真ん中に位置する人より良い点数かどうか調べたいので、真ん中に位置する値の中央値が適当です。
以上より、(ア)とわかります。

(問2)冊数ごとに何人いるのかを調べます。ここでは、次のような表に整理します。

冊数(冊) 0 1 2 3 4 12 51
人数(人) 1 5 3 3 1 1 1

・平均値
冊数の合計を人数の15人で割って平均値を求めます。
(0×1+1×5+2×3+3×3+4×1+12×1+51×1)÷15=5.8(冊)

・中央値
15人いるので、真ん中に位置するのは多い順(少ない順)に並べかえたときの8番目です。表より、8番目は2冊とわかります。

・最頻値
表の中で、最も人数が多い冊数は1冊なので、最頻値は1冊とわかります。

(問3)(問2)より、平均値は5.8冊なので、この15人は平均5.8冊の本を読んでいることになります。しかし、実際に5.8冊以上読んでいる生徒は2人だけで、その他の13人は4冊以下です。よって、このようなデータのときは、平均値を代表値とするのはあまり適当とはいえません。
(参考)他の値とは極端にかけ離れた値を外れ値といい、平均値は外れ値の影響を大きく受けます。

日能研がこの問題を選んだ理由

多くの子どもが、データを代表する値として最初に思い浮かべるのは平均値でしょう。しかし、平均値がいつでもデータの「代表」として適切とは限りません。問題の冒頭で、3つの代表値が説明されています。子ども達はこの問題を通して、3つの代表値を身近な場面と結びつけていきます。それぞれの場面と3つの代表値を結びつけることで、3つの代表値の特徴や強みを明らかにすることができます。

また、2020年4月から小学校で実施されている新学習指導要領では、統計的な問題解決が重視され、中学校で扱われていた代表値などが小学校に移行されました。この問題は、中学入試でいち早く代表値を取り入れたものの一つといえるでしょう。さらに、この問題からは「中学校で出あう外れ値(極端にかけ離れた値)にふれて、平均値の弱点を知り、当たり前だと思っていたことを疑ってみてほしい」といった先生方の想いや中学への学びの誘いが伝わってきます。

このような理由から、日能研ではこの問題を□○シリーズに選ぶことにいたしました。